森岡毅(もりおか つよし)氏は、日本を代表するマーケターであり実業家です。
現在、マーケティング支援会社である株式会社刀(かぶしきがいしゃ かたな)の代表取締役CEOを務めています。森岡氏はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の業績をV字回復させた立役者として知られ、丸亀製麺(トリドールホールディングス)やネスタリゾート神戸の再生にも携わった経歴から「日本を代表するマーケター」とも称されています。本記事では、森岡氏の基本プロフィール、事業の特徴・実績、そして経営理念・ビジョンについて詳しく紹介します。
基本プロフィール

氏名・役職:
森岡 毅(もりおか つよし)氏。株式会社刀 代表取締役 兼 CEO。
1972年生まれ、兵庫県伊丹市出身 の経営者です。
会社概要:
森岡氏が率いる株式会社刀(Katana Inc.)は、2017年10月18日に設立されたマーケティング支援企業です 。
本社所在地:大阪府大阪市(梅田)
資本金:9,900万円
上場情報:非上場の独立系企業
学歴:
森岡氏は兵庫県立伊丹高等学校を経て神戸大学経営学部を卒業しています。大学で経営学を専攻し、マーケティング分野への素地を築きました。
職歴:
1996年にP&Gジャパン株式会社に入社し、マーケティング本部に配属されました。同社ではヘアケアブランド「ヴィダル・サスーン」などのブランドマネージャーを歴任し、その後米国本社(シンシナティ)へ移籍。北米「パンテーン」のブランドマネージャーや北東アジア担当のアソシエイト・マーケティング・ディレクター、さらにP&Gが買収したウエラジャパンの副代表など要職を務め、14年間にわたりマーケティングの実績を積みました。
2010年6月、森岡氏はP&Gを退社し、大阪のテーマパークUSJを運営する合同会社ユー・エス・ジェイ(USJ)にチーフマーケティングオフィサー(CMO)執行役員として転身します。当時経営難に陥っていたUSJにおいて、着任直後から大規模な改革を断行しました。森岡氏は“三段ロケット構想”と名付けた復興戦略を掲げ、まず2012年に子供向けエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を開業して家族客を呼び込み、得た収益をもとに第二段として2014年に大型投資で「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッター」を開業。これにより年間入場者数は就任前の730万人台から2014年度には1,270万人へ急増し、翌2015年度には1,390万人と東京ディズニーシーを超えて世界第4位となるまで業績を伸ばしました。USJの入場料を値上げしつつ集客を倍増させた手腕が評価され、同社を見事に再建へ導いたのです。森岡氏は2017年1月にUSJを退任しました。
起業のきっかけ:
USJでの再建を成し遂げた森岡氏は、「マーケティングの力で日本企業を元気にしたい」という志を胸に独立を決意します。2017年10月、自身の名刀となるマーケティング会社「株式会社刀」を設立しました。
森岡氏は起業の動機について、P&G退社後にUSJに飛び込んだときと同様に「大きな変革期にある今の日本企業の力になりたい」という想いがあったと述べています。社名「刀」には、“日本企業が世界で戦うための武器になりたい”との願いが込められており、マーケティングを現代の日本企業にとっての武器にしてほしいという意味があります。森岡氏は「大変革の時代に覚悟を決めた企業がマーケティング能力を獲得するための武器になりたい」と語っており、この言葉に彼の起業への熱意が表れています。
事業の特徴・実績

事業内容:
株式会社刀は「マーケティングノウハウのライセンシングカンパニー」という独自のビジネスモデルを掲げています。公式サイトによれば、「刀は、企業が自ら課題解決に取り組めるよう『マーケティングノウハウそのものを移植する』世界初のマーケティングノウハウのライセンシングカンパニー」です。
従来のコンサルティングのように単に助言するのではなく、自社の優れたマーケターをチームで送り込み、クライアント企業の組織に高度なマーケティング能力を根付かせることを重視しています。いわば「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」支援であり、これによって企業が自走できる持続的成長を実現する点が刀のサービスの特徴です。
顧客層・市場ニーズ:
いる刀の最大の強みは、USJ再建で実証された緻密なマーケティング戦略立案と実行力、そしてそのノウハウを組織に「移植」できる点です。単なるコンサルタントではなく、必要とあれば経営陣に入り込んで事業改革を進める実行集団であることが他社にない特徴と言えます。
実際、刀には市場構造の解析や需要予測モデル開発のプロ、ファイナンスのプロなど各分野の精鋭が揃っており、問題解決だけでなくクライアント企業の人材育成まで視野に入れた包括支援を提供しています。
主な実績: 森岡氏および刀社のこれまでの実績として、以下のようなプロジェクトが挙げられます。
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ)のV字回復: 森岡氏個人の実績ですが、USJで実施した大胆な集客戦略により、2010年~2015年に年間入場者数を約730万人から1,390万人へ倍増させた成功は特筆に値します。この成果は刀のマーケティング手法の原点であり、「森岡メソッド」として体系化されています。
- ネスタリゾート神戸の再生: 旧グリーンピア三木を再生した大型レジャー施設「ネスタリゾート神戸」に2018年から刀が支援参画。刀は同施設のコンセプトを“大自然の冒険テーマパーク”へ刷新し、宿泊客頼みだった収益構造を日帰り客主体に転換する大胆なマーケティング戦略を実行しました。その結果、コロナ禍にも関わらず2020年9月には前年同月比133%の売上を達成し、2020年12月期に初の営業黒字化を成し遂げています。刀独自のノウハウ導入により、地方レジャー施設の再生に成功した好例です。
- 丸亀製麺(トリドールHD)の業績回復支援:
全国展開するうどんチェーン丸亀製麺を擁するトリドールホールディングスに対して、2019年よりマーケティング支援を実施。
具体的な施策詳細は公開されていませんが、森岡氏の知名度もあり大手外食チェーンの改革に関与したことが話題となりました。 - 西武園ゆうえんちのリニューアル: 西武グループの遊園地「西武園ゆうえんち」の再生プロジェクトに2019年から参画し、2021年5月のグランドリニューアルオープンを成功に導きました。昭和の雰囲気を再現したユニークなコンセプトで集客に成功し、リニューアル後には西武HD後藤社長から「発想が非常にパワフルで次元が違う。日本全体を元気にするモデルケースになってほしい」と高い評価を受けています。
- 沖縄北部テーマパーク構想「ジャングリア沖縄」: 2018年より沖縄県今帰仁村でテーマパーク開発構想「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を推進しています。
都市部ではなく自然豊かな北部に大型集客施設を作る試みで、2025年夏の開業に向け準備中です。地域振興と観光創出を両立させるプロジェクトとして注目されています。


【出典】https://katana-marketing.co.jp/project/

これらの実績のほかにも、刀は地方の老舗企業や新興ベンチャー企業への支援実績を積み重ねています。2020年には大和証券グループから約140億円の出資を受け、地方の中小レジャー施設・飲食店・ホテルなどに投資して経営再建を図る事業を開始するなど、事業規模も拡大しています。また、2021年にはメンズコスメ企業バルクオムとの資本業務提携を行いマーケティング支援を実施するなど、新分野へも挑戦を広げています。
メディア掲載・受賞歴:

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
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森岡毅氏および株式会社刀は、多くのメディアに取り上げられてきました。テレビ東京の経済ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』で特集が組まれたほか 、日本経済新聞や東洋経済オンラインなど数々のビジネス誌でその戦略が紹介されています。
また森岡氏自身、USJ再建の経験をまとめた著書『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』がビジネス書大賞を受賞するなど評価を受けています。近年ではデジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’21(第27回AMDアワード)にて功労賞(Lifetime Achievement Award)を受賞し、マーケティング分野での長年の功績が称えられました。さらに2022年には第17回渡辺晋賞を受賞しており、エンターテインメントとマーケティングの融合による社会貢献が評価されています。
経営理念・ビジョン
経営者の価値観:
森岡毅氏は「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気にする」という強い信念を掲げています 。USJでの成功体験から、日本企業には本質的なマーケティング力が必要不可欠だと痛感しており、それを普及させることが自身の使命だと考えています。森岡氏は「企業に本当に必要なのは自ら魚を釣る力を持つこと」と述べており、従来の外部任せのやり方ではなく自前でマーケティングを遂行できる組織能力を養うことの重要性を説いています。
会社のミッション:
株式会社刀のミッションは、一言でいえば「マーケティングで日本社会を活性化する」ことです。公式ミッションステートメントとして「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に!」を掲げ、マーケティングの力で企業の成長ひいては日本の未来を豊かにすることを目指しています。
刀の支援を通じて育成されたマーケター人材を各業界に輩出し、日本全体の競争力向上に繋げることも社会的使命と位置付けています。
目指す社会的役割:
森岡氏は自社の役割を「覚悟ある経営者の懐刀(腹心の武器)になること」だと述べています 。「つながった世界と戦う日本の武器になりたい」という表現に象徴されるように 、グローバル競争に挑む日本企業を陰日向から支える存在でありたいというのが刀のビジョンです。単なるアドバイザーに留まらず、場合によっては自ら当事者(経営メンバー)となって共に汗を流すパートナーとして、日本企業の変革を後押しします。
実現したい世界:
森岡氏と刀社が描く未来像は、「マーケティングが浸透し企業が自走力を持った日本社会」です。マーケティングによって生み出された新たな価値が次々と創出され、人々が豊かさと喜びを享受できる社会を実現したいと考えています。そのために森岡氏は、自社による事業創造や必要に応じた資本参画も行い、社会課題の解決に寄与しようとしています。例えば地方創生や伝統産業の活性化といったテーマにも、マーケティングとエンターテイメントの力で挑戦し、日本全体を元気にすることを最終的なゴールとしています。
参考文献・出典:
森岡毅氏公式サイト・株式会社刀公式サイト (株式会社 刀) (トップメッセージ|株式会社 刀)、株式会社刀プレスリリース (マーケター森岡毅が率いる株式会社刀は、志高き精鋭を募集 | 株式会社刀のプレスリリース) (マーケター森岡毅が率いる株式会社刀は、志高き精鋭を募集 | 株式会社刀のプレスリリース)、森岡毅氏 Wikipedia (森岡毅 – Wikipedia) (森岡毅 – Wikipedia)、日経新聞・東洋経済オンラインの記事 (森岡毅 – Wikipedia) (森岡毅 – Wikipedia)など。
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