新型コロナウイルス禍で急速に普及した在宅勤務(テレワーク)は、感染収束とともに縮小傾向にあります。一方、2024年度・2025年度入社に向けては初任給の大幅引き上げも続いており、働き方や賃金面で大きな変化が起こっています。これらの動きは企業にとっても働く人にとっても大きなテーマ。
- 「なぜ今、在宅勤務は廃止する企業が増えているのか?」
- 「在宅勤務がなくなると、就活生や若手転職者にどんな影響があるのか?」
- 「初任給30万円時代ってどういう背景があるの?」
こういった疑問に答えながら、企業側と働く側それぞれの視点を整理していきます。
1. 在宅勤務廃止の背景と現状
テレワーク実施率の低下
- コロナ禍最盛期(2020年5月)の在宅勤務実施率: 約31.5%
- 2023年7月には15.5%まで低下
- 2025年1月にはさらに下がり14.6%に到達(過去最低水準)
コロナが落ち着いてから、一部企業では「もうリモートワークは必要ない」と判断したところも増えています。ホンダやGMOインターネットグループが原則週5日出社へ戻すなど、大手企業の動向は特に注目度が高いです。
企業側が重視するポイント
- 対面コミュニケーションの活性化
- 社員同士の情報共有や雑談から生まれる新しいアイデア(「セレンディピティー」)が得やすい
- 新人育成やチームワーク向上
- リモートだと相談しにくいと感じる新人・若手が多い
- セキュリティ・人事評価の公平性
- 出社していれば勤務実態や仕事ぶりを把握しやすい
要するに、企業文化や組織力の再強化を図る上で「出社回帰」のメリットを強調する経営者が増えています。
2. 「脱テレワーク」で生じるメリット・デメリット
メリット(企業視点)
- コミュニケーション不足や新人教育の不安解消
- チームとしての一体感や結束力が高まる
- 社員を直接管理しやすい
デメリット(従業員視点)
- 通勤時間とコストが元に戻ってしまう
- 育児や介護との両立が難しくなる
- 「リモートでも仕事がこなせるのに」と感じる人材からの反発や離職リスクが高まる
「出社は大事だが、週5日は厳しい」という声も多く、一方的な廃止はトラブルの火種になります。
3. 就活生への影響
Q. 就活生は在宅勤務に対してどう考えているの?
- 柔軟な働き方を望んでいる: 「将来の育児・介護期に在宅勤務できると助かる」
- ただし「入社直後は直接先輩から学びたい」「オフィスで仕事を覚えたい」という希望も強い
たとえば電通の「Z世代就活生調査2024」では、約66%が“出社中心”を望んでおり、そのうち8割近くが「手取り足取り教えてほしい」と回答。
ポイント: 「ハイブリッド勤務がベスト」という就活生が多いので、企業のテレワーク方針は企業選びの重要項目になりつつあります。
4. 20代の転職希望者への影響
Q. すでに働く若手が「在宅勤務廃止」で不満を持つのはなぜ?
- コロナ禍で在宅勤務の快適さを経験済み
- リモートでも十分仕事ができるスキルや環境が整っている
- 通勤ストレスや拘束感が強くなると「キャリアアップを狙って別の会社へ…」という考えが生まれやすい
特にIT企業やデジタル系職種はリモートでも成果を出しやすい傾向があります。出社回帰がきっかけで優秀な若手が流出したケースも報告されています。
5. 会社経営者にとっての課題と展望
経営側が期待すること
- 対面コミュニケーションによる組織力アップ
- 新人・若手の育成効率を高める
- 公平な人事評価やセキュリティ管理
しかし「硬直的な方針」はリスクも
- リモート勤務を希望する人材が敬遠する → 採用難・人材流出の可能性
- 特に高度専門職やデジタル人材は「在宅・リモートOK」の企業へ流れやすい
最近の報道では「リモートワーク廃止で一部人材を“自主的に辞めさせる”狙いがあるのでは」という指摘もありますが、社員側の不信感を高めるリスクも忘れてはいけません。
「ハイブリッド勤務」が妥協点?
完全リモート禁止でもなく、完全フルリモートでもない、週2〜3日は在宅を認めるハイブリッド勤務を推奨するなど、柔軟な戦略が求められています。
6. 初任給30万円時代の到来:賃上げの背景
物価上昇(インフレ)への対応
- エネルギーや食料品を中心に消費者物価が上昇
- 実質所得が目減りしないように、企業も基本給や初任給を上げ始めた
- 政府の「賃上げ促進策」も後押ししている
人材獲得競争の激化
- 少子化で新卒人口が減少 → 企業間の争奪戦が熾烈化
- 大手や高収益企業を中心に初任給を25万〜30万円台へ一気に引き上げる例が増加
- 中小企業は「応募が来ないからやむなく上げたが、固定費負担が大きい」という苦悩も
具体例
- 三井住友銀行: 大卒初任給 25.5万円 → 30万円
- 東京海上日動火災: 28万円 → 職種によって41万円まで引き上げ
- ユニクロ(ファーストリテイリング): 30万円 → 33万円
- 明治安田生命: 29.5万円 → 33.2万円
- 三井物産: 32万円
- カプコン: 30万円
など、かつては業界ごとにほぼ横並びだった初任給が**「30万円」を目安に一気に上昇**しています。
7. よくある疑問Q&A
Q1. 在宅勤務が減るのは、企業としてデメリットも大きいのでは?
A. そうです。リモートを望む人材が流出するリスクや、採用競争力の低下といったデメリットがあります。とはいえ企業側は「組織力強化」や「評価の明確化」を重視し、バランスを模索している状況です。
Q2. 初任給が上がると入社後の年次昇給や先輩の給与はどうなる?
A. 一部の企業では初任給だけ高くすると社内不公平が生じるため、全社員の給与テーブルを見直す流れが起きています。特に中小企業にとっては固定費増で「死活問題」となるケースもあり、簡単にはいきません。
Q3. 就活生が企業を選ぶときのポイントは?
A. たとえば以下の点を見る就活生が増えています。
- 在宅勤務やフレックス制度など働き方の柔軟性
- 入社後の研修・サポート体制(オンラインでも対面でも充実しているか)
- 初任給や昇給カーブ、福利厚生など待遇面
9. まとめ
- 在宅勤務(テレワーク)廃止の潮流
- コロナ禍が落ち着き、対面コミュニケーションや新人育成強化のため「出社回帰」を進める企業が増加。
- しかし、リモートを好む優秀層の流出や採用難につながる懸念も。企業はハイブリッド勤務など妥協点を探る必要がある。
- 初任給の上昇トレンド
- 物価高への対策と人材獲得競争の激化が背景。
- 大手・高収益企業を中心に「初任給30万円」が一般化しつつあるが、中小企業との格差拡大も問題化している。
いま日本の働き方は**「柔軟性を取るか、対面重視で組織力を上げるか」**という難しい選択に迫られています。同時に、賃金引き上げの流れは歓迎される一方で、コスト負担や社内不公平の解消など新たな課題も浮上しています。
就活生・若手社会人・経営者という異なる立場それぞれが、こうした変化をどのように活かしていくか。自分に合った働き方やキャリア設計を考えるうえで、この2つの潮流はしばらく見逃せない重要トピックとなるでしょう。
参考文献・出典リスト
・2023年卒業予定の学生に調査、半数以上がテレワーク制度の有無を「重視」
・初任給30万円時代:業界「横並び」が崩壊、人手不足で人材確保
・【2024年度 初任給】引き上げる企業多数、高額な初任給の裏側
おわりに
コロナ禍を境に働き方への意識は劇的に変化しました。企業と労働者の両方がメリット・デメリットを天秤にかけながら、最適な道を探ろうとしています。これから就職・転職を考える方も、経営方針を考える方も、**「自分(自社)にとってどの働き方が最適か」**を見定めることが大切です。世の中の動きを把握しながら、ぜひ今後のキャリアやビジネス戦略に生かしてください。
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