今回インタビューを受けて頂いたリーダーは、株式会社MINOYOSHI 代表取締役社長の安江好範さん。大学時代の新聞奨学生経験をきっかけに新聞販売業界へと足を踏み入れ、2015年に滋賀県で個人店を継承する形で独立。衰退が叫ばれる新聞業界の変化に対応するため、ハウスクリーニングや電気工事の分野へも積極的に事業を展開し、地域の暮らしを多角的に支える企業へと成長を遂げています。危機を乗り越えながら新たな挑戦を続ける安江さんが、これまでに描いた夢をどのように叶え、今後どんなビジョンを実現しようとしているのか。その事業構想の核心を伺いました。

1. 会社・事業概要
- 新聞販売事業
滋賀県湖南市全域を中心に、朝日新聞・毎日新聞・中日新聞をはじめとする複数の新聞を合計約2,300部ほど配達している。もともとは朝日新聞のみ取り扱っていたが、業界の再編により毎日・中日を預かり、一括して配達する体制に移行中。今後は京都新聞・産経新聞・日経新聞も扱う予定で、最終的に「読売新聞以外はすべて配達」する形に拡大していく見込み。
収益源は「購読料」と「折込広告料」。しかし、新聞の購読者数自体が減少傾向にあり、新型コロナの影響も重なって折込広告出稿が激減するなど、収益面では厳しい局面に直面している。 - ハウスクリーニング事業
新聞折込チラシで読者向けに宣伝を行うほか、生協(コープ)の下請けや暮らしのマーケット、その他ポータルサイトを通じて滋賀・京都・大阪からの依頼を受ける。エアコンクリーニング、水回り全般などを中心に行い、技術習得や研修を重ねながら徐々にサービス範囲を拡大している。
元々は「新聞購読者向けのちょっとした家事代行サービス」だったが、コロナ禍による新聞売上減の危機感から本格化。現在は月によっては新聞事業に匹敵するほどの売上をハウスクリーンで生み出す可能性もあり、重要な収益の柱として育成中である。
2. 新聞事業の歩みと業界の特殊性
- 独立までの経緯
安江さんは大学時代、「新聞奨学生」として住み込みで朝刊配達を行い、奨学金を得て大学を卒業。
その後、一旦は建築会社に就職したが早々に退職し、滋賀県で新しく立ち上がる新聞販売会社の社員募集を偶然見つけて応募。「もう新聞配達はやりたくない」と思いつつ、最新の顧客管理システムに触れて興味をもち、そこで約11年間勤務した。
勤務中に経営や営業のノウハウを積みながら「いつかは自分の裁量でやりたい」という思いが芽生え、2015年に朝日新聞のエリアを事業譲渡という形で引き継ぎ、独立を果たす。 - テリトリー制度と再編の進行
新聞は特殊指定を受けているため、各社が地域単位で専売店を置き、定価も全国統一。
自由競争の代わりに「テリトリー制度」を敷いているので、勝手に別地域で販売拡大ができない反面、エリアが確保されるメリットもある。
しかし読者数の減少により従来の販売店同士が共存しにくくなり、複数銘柄をまとめて配達する流れが加速している。安江さん自身も、朝日新聞だけでなく毎日・中日・京都・産経・日経などをまとめて配達し、効率化を図る方針へシフトしている。 - コロナ禍と収益悪化
新聞販売の売上は購読料と折込広告料が柱だが、コロナ禍で企業が広告出稿を抑制。折込広告の激減により急速に収益が落ち込む。このまま新聞事業に依存し続けるのはリスクが高いと判断し、別の売上源確保としてハウスクリーニング事業を本格化させた。
3. ハウスクリーニング参入の理由と発展経緯
- きっかけは“副業?”から
新聞配達員が不足する中、他にもポスティング・牛乳配達など様々な事業を検討・実行してきた。
だがいずれも人を増やさないと売上が伸びにくい。そんな中「ハウスクリーニングなら、自分の技術と身体1つで初期コストを抑えて売上を作れる」という利点に着目。コロナ禍で本格参入を決断した。
当初はエアコンクリーニングをメインに、暮らしのマーケットでの実績や口コミを積み上げつつ、研修を経て水回りやハウスクリーン全般へ対応範囲を広げている。 - 新聞との“両輪”経営
新聞配達は配達員20名ほどを雇用しつつも、売上全体では規模が大きいが、利益率は年々悪化している。
一方、ハウスクリーニングは年間売上は新聞事業と比べて5分の1ほどではあるが、利益率が高い。両輪を回すことで、新聞の減収リスクをハウスクリーンで補うというスタイルをとっている。
さらに近年は電気工事や家電販売にも進出予定で、「お客様の暮らしをトータルサポートできるような体制」を構想中。新聞販売網による顧客との結びつきを活かし、サービス多角化を推進している。
4. 新たな試みと地域への貢献
- BNI(異業種交流会)の活用
毎週朝6時半から行われるBNIの定例会に参加し、多様な業種の経営者たちと人脈を構築。中でも地元サッカーチームとの連携で日刊スポーツの特別を発行し、紹介だけで短期間に大量の購読契約を獲得した事例が大きな成功体験となった。
「新聞なんてオワコンだ」とあきらめず、やり方次第ではまだ需要を掘り起こせると確信したきっかけになった。
- 高齢者世帯への総合サービス構想
新聞を取っているのは年齢層の高い家庭が多いため、その方々の「困りごと解決の窓口」になるサービスづくりを検討中。配達員が地域を巡回している強みを活かし、見守りや家事サポート、必要に応じた専門業者への橋渡しなど、包括的なサポートができないか模索している。
「新聞の紙」自体に価値を感じてもらうだけでなく、地域の安心・安全のインフラとして展開すれば、まだまだ収益拡大につなげる余地はあると見ている。
5. 若い世代・就職希望者へのメッセージ
- 「まずはやってみる」姿勢の大切さ
大学時代に新聞奨学生として過酷な配達を経験したが、それを乗り越えたことで根性や実務力が身に付いたという。就職後、「思っていたのと違う」「誰がやるのか」などの不満は出てくるが、すぐに投げ出すのではなく、まずはある程度やり切ってみることで見えてくる道もある。 - 苦境でも動けば活路はある
コロナ禍で新聞業界が落ち込み、自分も廃業寸前の借金を抱えたが、そこで踏ん張ってハウスクリーニング事業を育てあげた。「死ぬ気」で動けば意外なチャンスに繋がるという実感があるため、「一度がむしゃらに取り組んでほしい」と強調する。 - 回り道が糧になる
建築の勉強をしながら新聞配達を続け、結果的に新聞販売店の経営者になった道筋は、予想外の展開だったが一つひとつの経験が今に活きている。自分のやりたいことが変わるのは当然で、その都度チャレンジし続けることで未来は開けると語っている。
まとめ
所定30〜45分を予定していたインタビューですが、私自身、話にのめり込んでいって、どんどんと質問をしてしまい1時間をゆうに超えるインタビューとなってしまいました。
安江さんは、衰退が叫ばれる新聞業界において、独立やエリアの移管を経験しながら、ハウスクリーニング事業をはじめ新たなビジネスを模索してきました。コロナ禍で打撃を受けながらも、異業種交流会(BNI)で得たネットワークとアイデアによって新聞契約の獲得に成功し、「新聞=オワコン」という定説を一部覆す手ごたえを得ています。
最先端の情報共有ツールなど登場している中で「新聞」というアナログな商品が促進する地域活性化、新しいビジネスチャンスは決して侮れないですね。
さらに、新聞の配達網や既存顧客を活かし、高齢者の困りごとを一括で解決するプラットフォーム的なサービスを築こうとする取り組みは、地域に根差す新しいビジネスモデルとしてこれからの動きが気になってしまいます!
「まずはやってみる」「一度はがむしゃらになって動いてみる」ことで新たな選択肢が開ける――。これまでの経験と試行錯誤を通じた安江さんの言葉は、これから社会に出る若者や転職・起業を考える人にとって、大きな励ましとなるでしょう。
会社概要
↓ハウスクリーニング事業の概要
店名 | エシカルノーマル 滋賀湖南店 |
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運営会社 | 株式会社MINOYOSHI |
所在地 | 〒520-3235 滋賀県湖南市平松北2-58 グランディア甲西 1F |
代表者 | 安江 好範 |
電話番号 | 0120-090-134 |
メール | shiga-konan@ethical-normal.com |
設立 | 2019年05月 |
従業員数 | 3人 |
事業内容 | ハウスクリーニング |
公式ホームページ | https://www.minoyoshi.com/ |

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